オムニバスショートショートストーリー
  『卒業』 case.1


 卒業までもう3ヶ月。


 今日も黒板の前で二人の男子が騒いでる。

 その片方、私はあいつが嫌い。だいっ嫌い。

 今日は何か紙を配り出した。

 立候補した卒業文集の編集委員を、そつなくこなしながらクラスを盛り上げてる。

 そういえば体育祭のクラス団長もやってたっけ。


 目立ちたがりで、いつもクラスのリーダー格。こないだも告白されてた、学年一のモテ男。

 私から見ればただのサル。調子にのってズボン下げてはいてたり、ネクタイ緩めてボタンは外してる。

 染めてないけど、さりげなく流行りな髪型。背は高いし足は速い。それだけ、のバカなサルだと私は思う。

 あんなにスカした顔をして、バカな男子でつるんでバカ騒ぎして。


 私はあいつが大っ嫌い。

 なのに私が睨んでるのもなんのその。テキトウに楽しいこと、一人一言書けだって。

 小さい紙切れが配られ回されてるのは、一番後ろにいる私でも分かった。

 けど待てども待てども一向に私まで紙は回ってこない。

 文句言ってやろうと思ったけど、やめた。

 文集委員のあいつに直接言ってやろうと思ったけど、やめた。

 だってね、私から言ってやるのも癪じゃない。

 私が紙を出してないことに気づいて、あいつから言ってくれば、なんとなく気分が良いように思えた。

 とてもそう思えて、私は知らないフリをきめた。


 その場で書ける程度の短いものだから、こんな帰りの会直前に行われてる。

 なら、賭けの結果が出るのは早い。

 絶対放課後すぐに作業を始める。あいつなら行動も早い。

 今日は私も隣のクラスの友達を少し待つことになってた。

 ささやかな賭けはきっと勝てる。

 うんと文句いってやるの。

 私のことで困った顔をさせてやる。