「爽透」
「そーすけー」

 それは、遠くから聞こえた馴染みの呼び声だ。
「なーに寝てるのよ」
「ほっぽってくぞ?」
 ぱちりと開いた目は声の主を映した。霞みを振り払うのに瞬きをして、もそりと爽透は起き上がる。
「気持ち良かったんだよ」
 恥ずかしそうに、拗ねたように、最初に口にしたのはこの言葉だった。
 差し出された細い手を借りて、爽透《そうすけ》は陽に溶け込むよう髪を揺らして立ち上がった。
「まあお前の季節だからな」
 苦笑げに体勢を整えたところで、隣りで貸していた手を放された翡海が、向かう方向とはまったく異なる方を指差した。
「でぇ、あの人たちはどうしよっか?」
「そうだな。俺ならタタキだな」
「僕なら三枚おろしかな」
「じゃヒミはミンチ希望で」
 翡海《ひみ》の指の先には、昼間にもかかわらず黒い一団が、もぞもぞと近付きつつあった。だがそれは一刻の間をおかず散り散りとなる。
 素手で次々と人だったものの残骸のピラミッドを作り上げるは、黒光りする皮ジャケットを引っ提げる斎汰《さいた》だった。
 しかし足下には自分が片付けたわけではないものが、散乱している。ヒュンヒュンと風を切る音とともに、小さなカードが宙を走る。
「うっわ、そーすけヤメテぇ」
「三枚おろしだけど?」
 ニヤリとした口許が、翡海にさらなる不快を加える。
「なんで二人ともグロい手使うのー」
「グロいって」
「翡海……」
 かく言う翡海はミンチ希望。元の姿の想像さえ出来かねるほど、片付けたものが散乱していた。
「原形分かる方がかえってグロいじゃない! ヒミやなんだもん、グロいの!」
 頭悩ます間に、斎汰・爽透以上に翡海の細い飛線がうねりをつくる。
 その甲斐あってか、事は物の五分とかからなかった。
「こないだの仕返しでしょ? つまんない」
「仕返しするだけの度胸があったんだ。褒めてやれ」
「確かに」
「まあね。それじゃあ言ってた通り、ラーメン食べに行こ!」
 おニューのサンダルが小気味良く鳴って、ゴツいブーツと白い革靴があとを追うように歩いていった。



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 あとがき?
なぜか気晴らしに即興で書いたものがまたこんなものに……
しかも続くらしい……